第九話 セイトと四座蔵ジュン | ディファレント・ワールド

 海城聖斗は目を覚ました。目に光が入ってくる。目が慣れてくると、自分の真上に照明があることに気づいた。聖斗は起き上がろうとするが、動けない。目線を下の方に動かすと、太いひもで手足・胴体を縛り付けられていた。次に自分のいる場所を見渡した。部屋の形は円形のようである。そして、カメラのようなものが三台、自分の周りに浮かんでいる。
(ドローン?監視されているわけか)
聖斗の世界でも数年前から普及し始めた。最初は犯罪に利用されていたり、トラブルをおこしたこともあり、国で規制がかけられた。この世界では、ドローンはさらに発達しているようである。なぜなら、部屋の壁で遮られているからだ。聖斗の世界のドローンならば壁で遮られている時点で飛ばせないし、落ちてしまうだろう。
聖斗が自分は監視されていることを思っていると、奥の方から音がした。音のする方を見ると、そこから光が縦に漏れ出して来た。
「?」
聖斗はそこに扉があるとは、気づかなかった。扉からは人影が表れた。身長はそんなに高くはない。その人影はどんどん近づいてきた。すると、容姿がわかってくる。聖斗達を襲ってきた、あの二人組の男の子である。服装はあの時の鎧のようなものとは違い。制服を着ている。
ゴォ・ゴォ・ゴ
聖斗は男の子を睨んだ。空気が変わった。しかし、男の子の表情に変化はない。効いていないようである。ここで闘っても勝てないだろうし、逃げられないだろうことは聖斗も何となく感じていた。
「おはよう。って言ってもこの言葉じゃ通じないか」
男の子は近くにあった機械を取り出してきて、細い鉄の棒を手に持った。
「何をする気だ?」
「順応できるようにするだけだよ。おとなしくしてくれると助かる」
「信用出来るか。クソガキがぁー」
聖斗は声を荒げて言った。男の子が細い棒をいれようとすると、体を揺らし、暴れだした。普通なら誰しもが当然のことをするだろう。
「黙れ。殺す!」
男の子は口調を鋭くした。聖斗は首根っこを勢いよく掴まれ、睨まれ脅された。あの時より異常な恐怖を聖斗は感じた。容姿は子供だが力が格上なのだと、改めて実感した。
「・・・・」
聖斗は恐怖によって硬直してしまった。
「うん、早く終わらせて」
「彼が、おとなしくしないんだ」
スピーカは見当たらないが、声がした。これもこの世界のテクノロジーの力である。声の主はあの女の子ミウである。
「それでいい。これから痛くなるが我慢しなよ!」
(何だって。)
男の子が細い鉄の棒を聖斗の両耳に入れると、聖斗の体に激痛が走る。頭がとくに酷い。聖斗は手を縛られているので、頭を抱えることも出来ない。聖斗の体は大暴れである。聖斗は死にそうなほど痛い。
「無理か」
「うん。やっぱり弱い」
理不尽である。聖斗の激痛がしばらく続く。そして、痛みが無くなっていった。聖斗の汗がすごいことになっている。
「拷問か?このクソガキ」
「成功のようだね。これは拷問じゃないよ。君の頭をいじくっただけさ」
「ここはどこだ。何で俺を監視してたんだ?」
「そのことについて話をしよう」
「その前にこの紐はずせよ」
「それは、終わった後だよ。暴れられると、面倒だから」
聖斗の表情は不満である。聖斗を連れていくために気絶させたこと、あの片桐のこと。
「彼は、君達を試したと思うよ。持っている力をね」
「あの人は一体何なんだ?」
「僕の予想だと、僕より力は上だよ。なめられたものだが」
「一瞬、力を出した時、やられるかもしれないと思った。」
女の子ミウがスピーカを通じて、会話に入ってきた。あの時、片桐はわざとにやられて、倒れたということになる。聖斗とアヤナを試す為に。
「僕達は君達の成長の為に利用されたということになる」
「うん、今度あったら、あいつを殺してやりたい」
「ああ、まったくだよ!でも、難しいかもしれない」
「マジかよ!そんなに強いのかよ。あのおっさん」
この二人組も片桐にいっぱい食わされていて、ミウの悔しい感情は声でも伝わってきていた。男の子もミウに同意しているが、一方で殺すのは難しいかもしれないと思っていた。背聖斗は話においていかれている感じである。しかし、片桐があの時、自分達を試していたなどと夢にも思っていなかったからだ。
(あいつはひょっとして気づいているのか?)
「で、俺はこれからどうなるんだ?」
聖斗はアヤナのことを思い出していた。そして、男の子に肝心なことをまだ、聞かされていないので、聞いた。
「慌てなくても、これから話すよ」
「慌てるだろ普通!こんな状態だったら。拉致されているんだぞ。おれは!」
聖斗は自分を気絶させて、拉致しているくせに何を言っているんだということである。さすがにキレそうになる。聖斗で無くても、おそらく同じ感情を持つに違いない。
「わかった。落ち着け。でも、これ以上大人しく出来ないなら・・・」
「理不尽だ・・・」
男の子は薄ら笑いを浮かべた。
「本題に入ろうか。君のいる場所、この世界は君のいた世界とは違う」
「お前らの世界に連れてこられたということか?」
「君はついでだったんだよ。力を持っていたからね。僕達の本来の任務は、向こうにいる僕らの仲間の奪還だった。しかし、奴らに邪魔された。特にあの男に・・・」
男の子は聖斗の現在の状況や立場を説明している。聖斗は本来ならば拉致されることは無かったという。あの現場にいたことが運の尽きになってしまった。
「うん、仲間さえ返してくれれば良かったんだけど」
ミウが男の子に続けてしゃべった。
「お前らが俺たちの所で何かやっていたからだろ?じゃなきゃなぁー、公安にマークされることはないはずだ」
「君のいた世界で何かやるつもりではいたのは確かかな」
聖斗はその“何かやるつもり”というところが会話の中で気になった。頭に浮かぶのはテロ。そのことをストレートに聞いてみる。
「テロでもして、暴れるつもりだったのか。わざわざ、別の世界に来てまでも!」
「テロかー。残念だが、そんなものではない。こっちからわざわざ行ってやるのだから。君に一つ言えることは、あっちに力を持つ者を調査しにいったのは、本当だよ」
「で、俺は力を持っていたから、拉致したと」
「そう。手荒になってしまったが。あの彼女も連れて行きたかったんだけどね。余裕が無かった」
聖斗達の世界の力を持つものの調査をしたり、拉致をも平気でする。拉致といっても、スケールが違う。世界を跨いでしまうのだ。
「うん、もう時間?終わり」
ミウがこの問答は終わりにするように男の子に言う。
「そんな、時間か!海城聖斗、質問タイムは終わりだ」
「俺の名前、なぜ、知っている?教えた覚えはない。それで最後に・・・」
「何かな?」
聖斗はこのやり取りの締めとして聞く。
「お前達は何者だ?」
二人組とその組織の素性を問う。
「説明して無かったね。どっちにしろ、君にも関わることだからね!僕達は“オロチ”さぁ」
「オロチ・・・」
聖斗は男の子に続けて、“オロチ”とつぶやいた。オロチと聞いて、蛇の思いつく。どこかで聞いたような記憶がある。はっきりとはしないが。
「いい印象がないなー」
「これ以上のことはこれから説明する。君はとにかく“矯正所”連れていく」
「矯正所?」
聖斗の中で嫌な予感がした。

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