第十五話 闇の試練とその後

 アヤナの意識は光の方向へ向かおうとするが、逆の方向からは闇が追ってきていて意識を飲み込もうとしている。アヤナは怪訝な顔をして闇から逃れようとしているが、さらに悪魔の囁きが聞こえてくる。その声は誰でもないアヤナの声そのものだった。
「あたしはあんたの闇。あたしを否定出来ない。否定すればあんたを否定することと同じ。もう、あの男のことは忘れてあたしに身を委ねなさい。そうすれば前見たいに・・・」
「そうね。確かに楽になれるわね。気に食わない奴はぶっ飛ばせばいいもの!」
「なら。こっちに」
闇の囁きはうれしそうな声でアヤナの意識を呼び込もうとする。だが、アヤナは言葉を続ける。
「でも、もう自分をごまかしてあんなことするなんて嫌よ!それが、あいつと出会って、この世界に来て、そしてここの生活で変われた気がするの」
「それこそごまかしと変わらない」
アヤナの言葉に否定をするが如く矛盾を突きつけるがそれを突っぱねる。
「違うわ。戻れば結局何も変わらないし、今までと同じ。それがわかったの!」
「今までいいじゃん」
闇の囁きが大きくなってきている。
「冗談じゃないわ!私は戻らない。そしてあいつを見つけ出す」
アヤナはそこから一気に闇を振り切ろうとする。
「あんたからは闇・・・いや、人からは闇は無くならない。それを覚えてくおくことね!」
「・・・」
アヤナは何も言わず、何も思わなかつた。ただ、闇の方向を見ていただけ。それからアヤナを光が包み。闇が小さくなり見えなくなった。

 光の方から「雑魚」という言葉が印象的に聞こえて来ていた。アヤナはその言葉にむかつき、やがて目を覚ます。周りは暗いだけで一部明るいのはサクヤが持つライトだけである。
目に前に涙を浮かべているサクヤが目に入った。
「サクヤ・・・」
「やっと!」
アヤナは起き上がり、するとサクヤをじっと見た。
「!?」
サクヤは見つめられてどうしていいか分からず、アヤナから目を逸らすと。
「雑魚とはいってくれるじゃない」
「あれはね・・・その・・・」
言葉の後に謝ろうとするがアヤナがその前に言葉を発する。
「分かってる。ありがとう。サクヤ!」
なぜ、「雑魚」と自分に対して、サクヤが言ったか?最初それを聞いた時はイラつきもしたが、よく考えて見るとわかることでそれが分からないほどアヤナはバカではない。サクヤは逆にお礼を言われたが。
「でも、ごめん!」
「最初はムカついたけど、もうわかったから。それよりサクヤは何で?」
アヤナが疑問に思ったことは、サクヤがこの闇を自分より先に乗り越えることが出来たか?この闇を乗り越えるにはそれなりの精神力が必要でサクヤが早くクリア出来ると思ってもいないし、正直の所、無理なのではないかと思っていたからだ。そのことについてサクヤに聞こうとすると、後ろから気配を感じた。
「本当にビックリだったよ。見た時は」
その気配は声を発した。アヤナはすぐさま後ろを振り向いた。女性がライトを持って自分たちを見下ろしながら立っている。
「あんた確か!」
「琴吹さん」
サクヤがその立っている女子の名を呼んだ。
「はっきり言って、鍛錬が足りない。こんなにダウンするなんて。教官が最初言ったようにすぐ死ぬ!」
アヤナは訝しい目で琴吹という名をサクヤに呼ばれた女子を見ている。
「さすがは、首席は余裕だね」
「当たり前でしょ。このくらい。それと東条と木花って言ったっけ」
「そうだけど」
返事をするアヤナ。
「今まで遠くから見てたけど。他と比べれば、まぁーマシってところ」
「首席ってだけで随分偉そうに、あんまり調子乗らないで欲しいんだけど。イラつくから!」
二人のやり取りを見ているサクヤはどうしようと困っている感じである。
「ここで口喧嘩をしてもこっちに得はないし時間の無駄」
アヤナは立ち上がり琴吹を睨み始めた。圧気も混じっているが琴吹はそれに対して顔の表情に変化は無い。
「こんなのやめようよー。それより・・・」
「暴走しているのを抑えないと、こいつらはもう失格。闇に侵されている。お前達といつまでもかまっている時間はない」
「・・・」
そして、琴吹は暴走音が聞こえる方向へ歩いていってしまった。アヤナは何も言わず琴吹が行ってしまった方向を向いている。
「私達も」
「あの女・・・。後期中には・・・」
何かを決心したアヤナであった。
「それより」
「そうだったわね」
アヤナ達も琴吹と同じように暴走している准士達も止めにいく。そうしなければ闇に侵食されていない者達まで傷ついてしまうし、一応仲間同士でそんなことは合ってはならない。これは教官達も教えの一つでもある。これも試験の内容にも含まれていた。そして、二人は暴走音のする奥の方へ進む。すると、琴吹が闇に侵され暴れていた一人を気絶させた。一旦地面に寝かせている。
「遅いな。ノロマ!」
「ちっ」
久しぶりに舌打ちをしてしまったアヤナ。相当、ムカついていた。
「あんた今すぐぶっ飛ばしたい気分だけど、ここは手伝うわ」
「あたりまえ。やることはわかってる?」
「うん」
つまり、様子を見て救えそうな者は声がけをする。例えばサクヤがアヤナに対してやったことなど。そして残念ながら闇に人格などが乗っ取られてしまった者は力づくで、ようは琴吹がやったように暴れている者を気絶するまでやる。これには闇を乗り越えた者と力を合わせてやらなければこの状況に対処出来ない。というのはアヤナ達含め闇を乗り越えた者は一皮向けひと味違うのだ。琴吹に関しては最初からこの准達のメンバーの中では飛び抜けていて、闇の誘惑は効かない。
「ごめん!」
アヤナは暴れている者を圧気を使って素手で攻撃し、気絶させた。サクヤもそれに協力している。それを暗闇の中でやるのは亜人を除けば至難の業であるが、アヤナ達准士は気配を研ぎ澄ましながら対処していた。琴吹はそれを単独でやっている。そして時間が経ちやがてこの暗闇の中に一筋の光が差込始めた。試練の終了を意味する。その光は夕暮れ特有のものでまもなく完全に日が沈む頃であった。
 
  時は少し遡る。姫城と水波が”穢れの洞窟”の前にいた。空はもう夕暮れ時で試練を受けている准士達を時間になったので向かいにきた。
「さて、今回はどうなっているか?」
「もう時間になるので門を開けますよ」
水波はそう言うと門の封印を解き始める。この重厚な門を姫城は楽に開けてしまった。すると闇が漏れ始めてくる。
「水波、いってくる!」
姫城は水波のそう言い、闇が漏れ出す門の中に入っていった。
「なるほど!今回はそうなったか」
門の中に入った姫城は中の気配を感じ取り、状況を悟ったようである。
「時間だ。早く連れ出せ!」
闇の侵されてしまった准士達を一人一人確認していく。途中、襲ってくるものもいたが、姫城の前では瞬間的に気絶させられる。それは琴吹の比ではない力である。当たり前のことではあるが。
「貴様ら」
姫城はアヤナ達を見つける。足元にはアヤナ達が気絶させた准士達が寝かせられていた。
「今、確認する。我が確認したら早く連れ出せ。あまり時間はないぞ」
「教官。試練になりませんでしたよ」
琴吹が余裕な口調で一言姫城に言った。
「琴吹、あまり調子に乗るな。それが貴様の死につながる。まだまだ未熟な小娘だ!」
「ご指摘肝に銘じます。姫城教官」
そう言うと琴吹は気絶した者を外へ運び出した。それを姫城は複雑な表情で見る。
「東条、木花、貴様らは合格だ。貴様らも早くここから出ろ。終わりの訓示をおこなう」
「はい!」
アヤナとサクヤは返事をする。姫城は洞窟の奥まで行き、一通り確認した。皆、外に出たことを確認すると水波はこの門を閉じ、祝詞を読み上げ、封印の札を貼った。
「今立っている貴様らは前期試練の合格者だ。合格したからと言って驕らず、日々精進を怠るな!」
「教官。今倒れている人達は?」
ある一人の准士が倒れてしまった者のことについて気になり聞いてみた。
「残念だが闇に侵されてしまった者は不合格。この養成所から退場だ。別れの挨拶はしておけ」
「はい!」
合格した准士達は返事をした。
「では解散。各自、宿舎に戻ってよい」
それからアヤナとサクヤは自分達の部屋に戻った。部屋仲間の二人は部残念ながら闇に飲み込まれ不合格に。しばらくして二人が戻って荷物をまとめ始める。
「あしたにはもうー」
アヤナがそう言っているが二人共反応せずただうつろな目をしていた。
「元気でー」
「また、会えたら」
アヤナとサクヤはそれぞれ夜の内に挨拶を済ませた。
それから部屋は人数が大幅に減ったことにより選択武器別に再編成される形になった。

 後期に入ってもう中頃。木刀と木刀がぶつかり合う音がしている。刀術の稽古の場面でアヤナ他、剣を選択した准士達が姫城の稽古を校庭で受けていた。しかし、一緒に行動しているサクヤはいなかった。彼女は剣を選ばず、弓を選んだ。それにより部屋も別になった。
「我に傷を負わせてみろ!遠慮することはない」
姫城がニヤリとしながらアヤナ含む剣を選択した准士達が姫城に挑んでいる。姫城は剣における武器の専門教官でもあった。アヤナ達は姫城に歯が立たず逆にヘトヘトしてしまっている。一方の姫城は余裕の表情をしており、稽古をしているのはアヤナ達の部屋のメンバーだけでなく同じく剣を選択したメンバー4人もアヤナ達の前に稽古を付けていた。それでも疲れている様子は一切ない。
(一発でも当てて)
アヤナは木刀に圧気を纏わせ、突如、突きの突進を仕掛けた。
「小手先な。小娘」
あっさり一振りで跳ねのけられる。しかし、そこから倒れず二撃目を繰り出そうとする。胴を狙った攻撃だが姫城の前では無駄だった。
「貴様如きの力で我に一撃加えられると思ったか。浅はかな小娘よ!」
姫城は攻撃を避けず、木刀で跳ねのけることもせずただ素手でしかも親指と人差し指だけで止め逆にアヤナの木刀を取ってしまった。それにより座り込んでしまったアヤナに二刀の木刀を突きつける。首を跳ねる時のように。
「貴様はもう死んでいる。我の敵ならば。この意味がわかるな。東条?」
「はい」
「言ってみろ?」
アヤナに自分の言いたい意味を聞いた。すると、アヤナは立ち上げり姫城を見て答える。
「それは・・・格上相手に単独で動くなということです」
「そうだ!仲間を置いて犬死することになるからだ。相手の力をよく見極めろ。前にも教えたろ。図に乗るな雑魚のバカモノがぁ!」
「・・・」
アヤナは罵声を思いっきり浴びた。それを後ろでキョトンと見ていた残りの三人も。
「後ろの貴様らも!」
そう言った姫城は三人の元に瞬時に移動し、木刀を突きつけた。三人は姫城の迫力に怯えていた。これには中々慣れるものはいない。
「今日の稽古はここまでだ」
姫城は一本の木刀を地面に突き刺し、四人に背を向け立ち去る。
「挨拶はぁーーー!」
立ち去る姫城から大声が飛んで来た。四人はすぐさま立ち上がり、直立不動で礼をする。
「ありがとうございました!」
「木刀をしっかり磨いておけ。バカモノども!」
「はい!」
姫城から一言返事が返ってきた。姫城が見えなくなってから再び地面に倒れ込む。
「あの人の気配はなさそうね。はぁー、疲れた」
「大丈夫っ!」
同じ部屋の女子に声をかけられた。
「そっちこそ、あの人の圧気にビビってたでしょ」
「あれには無理よ」
「それにしても、つい一人で突っ走っちゃってごめんなさい。やっぱり無謀だったわね」
アヤナは先ほどの行動を姫城に指摘されたこともあり、反省していた。
「無敵に近いと思うぐらいのあの人に一矢報いたい気持ちはわかるけど」
もう一人の部屋の仲間がアヤナに近づいて言った。
「もう帰ろう」
三人目がそう言って、アヤナは自分の名が刻まれている木刀を引き抜こうとするがどうやら深く入っていて抜けない。
「抜けないんだけど、あの人はどんだけ」
「手伝うよ」
木刀を二人で引き抜こうとするもまだ抜けない。
「なんで?」
引き抜くのを手伝った女子が発した。
「わざとー?」
アヤナが姫城が故意にやったことを疑った。
「教官がいたらどうするの?私もやる」
「大丈夫よ!気配は感じないから」
そして三人掛かりで引き抜こうとした。
「抜けない!」
「何よこれ!」
「ありえないわ」
アヤナを含め三人が木刀を引き抜くだけで汗を垂らしていた。彼女らは亜人で木刀を引く抜くくらい簡単なはずである。にも関わらずこの現状である。
「教官を呼んで来よう。このままじゃ帰れない」
「それをあの人に言っても、”知るかボケ。貴様らでどうにかしろ”って言われるだけよ」
「そうだね」
今度は4人掛かりで引き抜こうとする。結果は少し上に動いただけ。
「もしかして・・・」
アヤナはあることに気づいた。三人はアヤナを見る。
「4人の圧を均等にして、一気に引き抜けば抜けるかも」
「全力でやってもダメだったから」
「それで」
その方法でやって見ると、最初は多少上に動いた。二回目、圧気を調整してリベンジするとスポンっとあっさりと抜けた。と同時に四人は地面に尻餅をついた。
「やっと抜けたー」
アヤナは笑顔で喜んだ。
「みんなありがとう」
「喜んでいる場合じゃないよ。もう、帰らないと。ペナルティーが」
「もう真っ暗だよ。帰ろう」
そして、急いで宿舎に向かっていった。常人からみればものすごい早さで走って行った。
「ふん」
実は木の陰に隠れていた者がいた。それは帰ったはずの姫城である。こっそり気配を殺して戻り、アヤナ達の様子を窺がっていた。
「そういうことだ。わかってくれたようだな!」
誰もいない所で普段固い表情を緩め、一人呟いた。
「さて、帰るか。特別に今日はペナルティーはなしにするか。主任教官として本当はいけないことだけど」
すると、瞬時にその場から消えた。その場はもう誰もいない。そして、アヤナ達は宿舎に着き、不思議と教官に見つかることなく自分達も部屋に戻ることが出来た。
「不思議ね!」
「私たちに与えられた奇跡よ!」
アヤナが部屋に戻る途中に一言呟いてそれに対して仲間が言う。その後夜食を食べ、風呂に入り、木刀を磨いて、寝て今日一日が終わった。

 ある休息の日の朝、聖ノ島に広がる森林中にあるとある広場で剣と身体を鍛える為のトレーニングをしていた。周りには誰もいない。剣は重たい木刀で素振りをし、その後に自分の圧気をコントロール出来るように体作りをしていた。そうしていると、周りから気配を感じた。
「誰?」
アヤナは気配を捉え、顔を上げると、あの正体は巨木の枝に立って、見下ろしていた。
「何?」
「たまたま、こっちに来たらノロマがいたから覗いてただ・け」
「相変わらずムカつくなその上から目線。あんた友達いないでしょ?」
言われた本人、琴吹は巨木の枝からトンっと降りた。普通の人がそんなことをすれば確実に骨折するだろう。
「ノロマ見たいな弱い友達はいないし、必要ないと思っているから」
「ノロマ、ノロマ、うるさいなぁー。あたしは東条アヤナって名前があるのぉ!」
アヤナはイライラしている。この世界に来てから、自分のことをわたしと使っていたが元の世界の時のようにあたしと自然と使っていた。
「イライラするなんてまだまだ修行が足りないし、自分のことをわたしじゃなくあたしって使っている。みんなの前で猫被っているんだ。これがノロマの本性かぁー!」
「猫を被っているつもりはないけど。あんた見たいにムカつく奴がいるとこういう口調になるみたい」
「ちょうど誰もいないから、勝負しない?力の上下をはっきりさせたいからさぁー」
アヤナは顔を少し険しくさせた。なぜなら
「はぁー、それ禁止でしょ」
「教官達のいる校舎からここまではだいぶ離れている。気づかれることはない。それとも勝負するのが怖い?度胸がないと、これから先、卒業してもダメなだけ。すぐ死んで終わり」
「チッ、わかったわ。そこまで言われたらわたしも我慢できない」
琴吹に煽られ、挑発に乗ってしまったアヤナ。頭ではまずいとわかっているがここまで言われたら黙っているわけにはいかなかった。アヤナのプライドである。琴吹は口角を吊り上げた。
「琴吹サエ」
琴吹はフルネームを名乗った。
「へぇ~。そんな名前だったんだ」
そして、両者は静かになり、周りは一瞬静寂に包まれた。お互い目を見たその瞬間。両者の拳が同時にぶつかり合う。しかし、アヤナは衝撃に耐えられず、後ろに体が動いてしまった。琴吹はさらに距離を詰め、正拳を繰り出そうとする。
(喰らっちゃ、まずい!)
アヤナは何とか正拳を避けることが出来た。そして、琴吹の腕を掴み、自分の後ろに投げ飛ばす。アヤナは琴吹を飛ばした方に即座に近づき、足蹴を入れようとしたが避けられてしまった。
「中々やるね。でも、ここからはそうはいかない」
「そう。ここからが本番!」
両者共に圧気が上がっていく。それと同時に周りの空気の流れにも変化している。
「これ以上やったら、教官達にバレるわ。どうすんの?」
「もう怖じ気づいた?ここからが亜人の闘いの醍醐味」
「冗談じゃない。あんたに負けるなんて。私のプライドが許さないから」
そして、圧気を纏った柔術戦が始まる。圧気を纏っているので一つの攻撃自体に威力があるので、攻撃を受けると、それなりのダメージを喰らうことになる。もちろん、常人が受ければ死んでしまう恐れがある。力のぶつかり合いは両者、拮抗していたが時間が経つと、アヤナが押される展開になってくる。
「このままじゃあ!」
アヤナの力は限界に近づきそうになっていた。すると、かすかにアヤナの身体が黄色くなりつつある。
「そうなら!」
琴吹の身体からも微かに風が集まり始めた。そして、両者がその状態でぶつかろうとした瞬間。
「このバカタレ共がぁー!」
両者は突如、現れた姫城から瞬間的に強烈な拳骨を喰らってしまう。勢い合った両者の圧気は無くなり、その変わりに圧倒的な力がこの場を支配した。両者はその支配には逆らうことは出来ない。
「メチャイタイ。何でここに?」
「確かに気配は感じなかったはず」
「貴様らごときに気取られず、近づくことなど朝飯前だ」
姫城は二人を睨みつけている。それに怯えているアヤナと琴吹である。
「・・・」
(相変わらず、怖いー。この人)
アヤナは姫城に目線を合わせることが出来ない。
「・・・」
(調子に乗りすぎた。まさか、ばれるなんて)
下を向いている琴吹は心の中で少し後悔していた。その様子をみていたる姫城は。
「我から視線を逸らすな。バカモノ。貴様らの仕出かしたことはわかっているな?琴吹」
「はい」
琴吹は姫城の目を見て返事をするが、いくら首席でも姫城相手には怖い。
「東条。貴様がこんなことをするとは」
「あいつが・・・」
東条は琴吹を見て、挑発されたのだと言い分を言おうとするが。それを姫城は制して。
「言い訳は聞かん。貴様の精神がまだまだ未熟ということだ。東条よ!」
「はい」
アヤナの反応に姫城はうなずく。姫城は腕を組み、二人に処分を言い渡す。
「うん。貴様ら二人は、我ら教官に無断で私闘をした。この養兵所では規則に反する行為だ。それはわかっているな。東条、琴吹!」
『はい』
アヤナと琴吹は一緒に返事をする。姫城の睨み、プレッシャーはすごい。それに泣き出さない二人。他の准士ならとっくに泣き出している。それぐらい説教する時の姫城の迫力はすごいのだ。
「東条、琴吹。貴様らは罰として今夜は野宿しろ。よいな!」
「・・・」
一瞬、無言になる。即座に反応出来ない二人。
「嫌とは言わないだろうな?貴様ら。返事はぁどうしたぁー?」
姫城は語尾を強くして、返事を求めた。
『はいっ』
大きい声で返事をした。
「良い。明け方になれば戻ってきてもよろしい」
そして、そこから立ち去ろうとする。しばらく距離を取ってから、小声で一言漏らす。
「いいライバルだ。これからが楽しみだ!」
次の瞬間、その場から消えた。アヤナは地面に座り込む。
「ハァー、怖かった。あんたのせい」
「人のせいするのは精神が未熟って、言って無かった?」
アヤナが不機嫌そうにしている。姫城の指摘は最もだからだ。
「ちっ。そうだけど」
「こうなったら、一緒に今夜やっていくしかないか」
「ホント勘弁だわ」
二人はこの森で一夜を明かすことになった。
「報告があります。本土から連絡が・・・」
姫城は校舎に戻ると、水波が引き締まった表情で話してきたので、何か重大なことがあったと思った。
「何かあったようだな?」
「ええ。本土で不穏な動きが」
それを聞いて、姫城がすぐにわかった。
「オロチがとうとう」
オロチに何かを仕出かしたようである。聖斗はどうしているのだろうか?

第二章 終

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