第十四話 アヤナの闇


 あれから目を覚ましたアヤナ達は、「いつまで寝ているのだ貴様ら!」と一喝されてしまう。
そしてあれこれ説明された。座学や訓練、体力作りそしてここでの生活についてなど。
 「貴様らは今日からアマテラスの准士。言っておくがまだ一人前ではない。半人前だ。それだけは理解しておけ!」
 「はいっ!」
 准士となった合格者達はおおきな声で返事をした。
 「よい。各自宿舎の部屋に入り、明日からの準備と仲間としっかり顔合わせをしておけ。今日は解散」
准士達は荷物を持ち、各自部屋に散っていった。
「確か4人部屋だったわね。誰かな」
アヤナも今向かっている所である。歩きながら一人ごとをブツブツつぶやいていた。
「あんた!」
寝泊まりする部屋のドアを開くと、なんとあの少女がいた。部屋は4つの簡易ベッドが置かれていた。少女はベッドに腰掛け窓の外を眺めていた。そこにアヤナが入ってくる。
「!?」
「はぁー、あんたとは腐れ縁のようね。名前は?」
「サクヤ・・・コノハナサクヤ。よっよろしく。えっとー・・」
「やっとしゃべったわ。私は東条アヤナ!」
お互いようやく自己紹介が出来た。
「ねぇ、何であの時いなくなったわけ?私やっぱ怖かった?」
すると、サクヤはコクリとうなづく。
「さっ、さっきはありがとう。あれが無かったら・・・」
サクヤは試験の時アヤナのあの煽りに礼を言った。
「あんたを見ていたら、こんな所で終わっちゃいけない奴だと思ってついね!」
その言葉にサクヤはアヤナの顔を見据えながら、驚いた表情を見せる。
「これからルームメイトになっちゃったけど、よろしく!それとごめん」
サクヤは再びコクリとうなづいた。
(うなづくのね。でもサクヤは以外とやるわ!)
(以外と素直なんだ!)
二人がそうしていると残りの二人も入ってきた。各自自己紹介を済ませた。サクヤは相変わらずな感じである。二人からは「よく耐えられたね。以外」と言われた。
「以外とやるのよ。サクヤは」
それからアヤナ達、准士は朝早くから座学と訓練に明け暮れた。早起きに関してはアヤナは社の頃から慣れていた。それは他も同様である。アヤナは元の世界では夜遅くまで起き、外に徘徊しており、家に帰らないことも当たり前。帰った所で両親もいない。不良仲間の所で寝泊まりすることもしょっちゅうで時にはフシダラなことも。まさに不良少女三昧だった。しかし、こちらの世界に来て、大巫女に拾われてからそれは変わっていった。
 このアマテラス養兵所の座学は圧気の基礎知識から応用そしてこの力の成り立ち、亜人についておおよそのことを教えられる。
 「皆さんもわかっていると思いますが改めて亜人というのは圧気を秘め、常人には持ち合わせていない特殊能力・身体能力があります。つまり普通の人間”常人”の上位種に当たる存在です」
 あの時の試験官が座学を准士達に教えていた。一部の者には復習をするような感覚である。その試験官の水波は東条アヤナに目を向けた。
 「退屈そうにしている東条さん、私が今言ったことで言いたいことは何でしょうか?」
 教官水波は姫城のような男勝りな感じではなく、おしとやかな感じである。しかし、ある意味では水波の方が言い知れぬ怖さがあると准士達の中で評判になっていた。アヤナは指されて
驚く。
「上の空ですか?あなたはここに何しに・・・」
すると水波の圧気が上がり教室内が冷えて来た。吐息も白くなっている。教室内にいる准士達がまずいと感じた。アヤナも同じ考えになる。そして隣の女の子に小声をかけられてすぐさま思い出す。
「えっとー・・・、力がある以上責任があるということですよね?」
「正解です。次は許しませんよ!これが姫城教官だったらあなたは・・・」
アヤナの周りの気温が下がっているのに、姫城の名を聞いたら悪寒がした。
「すみませんでした」
アヤナが謝ると室内の気温が元に戻っていった。

「貴様らの根性は虫以下だな。恥を知れ!」
姫城の怒声が辺りに響き渡る。アヤナ達准士は今、過酷な状況に置かれていた。それは山岳登山である。この聖ノ島の周辺にはいくつか島があるがその内の一つの島に大きな島がそびえ立っている。この島の山はとにかく特殊である。なぜなら山の環境が過酷で寒暖差がものすごく激しい。それに急激に空気が薄くなる。この山は富士ノ山よりは低いのだが空気が薄くなっていく現象が起きる。その為、亜人以外は立ち入りが禁止されていた。准士達はそこの頂上を目指している。さすがに亜人でも倒れてしまうものもいた。皆、表情は辛い・呆然としながら進んでいた。普通の人間ならば死んでてもおかしくない。
(これは死にたくなる感じね)
アヤナが後ろを振り向くとすでにサクヤは倒れ込んで口から泡を吹いていた。
「小娘どもーーー!リタイア出来ると甘ったれたことを思うなよ。我はお前らの苦痛の表情を見るのが楽しみでしょうがない。倒れた仲間は担いででも連れて行け。このままなら全員死ぬぞ。根性無しども!」
姫城が再び怒声と更なる理不尽な言葉を繰り出す。それに対して准士達はあまり反応を示さなかった。中には怒りの表情を出すものもいたがその者は瞬間的に姫城にどつかれた。
「”楽しみ”ってウソ。そんなの”S”で精神異常者。みんなに気合を・・・」
「東条。辛いなら無駄口を叩くな。貴様にそんな暇はない。今いったことは本当だ。バカタレがぁー!」
(地獄耳。よく聞こえたわね)
「教官。すみません」
アヤナは小声で姫城のことを言ったが、距離は離れていたが聞こえていた。もちろん謝るがどつかれてしまう。

 それからさらに日にちが過ぎていく。異常だった山岳登山も何とか乗り越え、組手や刀術など闘える術を習得していった。それだけでなく圧気や体力向上にも励んだ。アヤナは特に刀術に熱心に取り組んでいる。教官達の罵声を浴びながらも入所当初より確実に准士達はステップアップしていた。
「そろそろあの時期が来る」
「そうですね。今回はどれだけクリア出来るか?」
「これを乗り越えねば半人前は卒業はありえんからな!」
「ええ!」
夜、准士達が寝静まった後の教官室での姫城と水波のやりとりであった。それをたまたまトイレの帰りに聞いてしまったアヤナがいた。
「やな予感がするわね。また地獄なのね!」
アヤナは山岳登山の出来事を思い出してしまった。
「でも、あいつを見つけるまでは挫けらんない!」
あの日、聖斗がこの世界に攫われた出来事を思い返えす。これがアヤナこの世界での原動力になっていた。
「ネズミがうろついているようだ。水波教官?」
「悪いネズミです!まだいるなら懲らしめないといけませんね!」
両教官が大きい声で言った。アヤナの存在に気づいてるようである。アヤナは物音は一切立てていないが、わすかな圧気を捉えていた。
「ゲッ!まずい!」
アヤナはすぐにその場から離れ自分の部屋に戻っていった。
「東条さんですね」
「盗み聞きなどけしからんな!」
アヤナがいなくなると、個人で会話する程度の声量に自然と戻った。
「だがしかし、あいつは根性がある。つい、厳しくしてしまう。教官として平等に接しなければならないが!」
「同じです。何か惹かれるものがあるかもしれません。彼女はあのお方のお墨付きですし」
「そうだった。あのお方は滅多に出さないから、それを聞いた時は驚いた」
水波は教官室の冷蔵庫から白い瓶を取り出した。異世界日本語で清酒と書かれている。
「久しぶり飲みませんか?」
「しばらく飲む余裕が無かったからな!」
「実は私、少し飲んでいました!」
姫城はその言葉に驚く。自分は准士達の面倒を見るのに忙しかった為、酒などと言う発想も思いつく暇も無いのに、それなのに貴様はという感情が湧いてきた。
「水波。お前という奴は!」
姫城の圧気が上昇していく。准士達がそこにいたのならアウトだっただろう。
「勘弁してください。あの子らが起きてしまいます」
「確かに」
「さぁ、飲みましょう」
水波が酒を注いだ。そして乾杯をする。教官室の窓から三日月の夜空を眺めながら清酒を口に入れた。

 ― 穢れの岩戸
 そこはこの聖ノ島で最も穢れている場所であり、この島の闇そのものである。現在は闇が溢れ出さないように重厚な門と札で封じられていた。准士達は姫城と水波に引き連れられその門の手前に来ていた。というのも今日は准士達の前期の試練であった。ここに近づくにつれ、気分が悪くなってくるものもいる。
「気を抜くと本当にやばいじゃない」
そして、アヤナは先日の前期の試練について説明されたことをを思い出す。
「貴様達には、明日闇を乗り越えてもらう。これが試練だ!」
「あのー・・・」
一人の准士の女子が姫城に質問する。
「ん・・・質問か。終わったら質問を受けるつもりだったがいいだろ」
「ありがとうございます。単純な質問ですが、この島に闇などというものがあるのですか?この島は名の通り神聖な島なはずなのに」
(それもそうね!)
アヤナもその質問でこの島の矛盾に気づく。それを考えていると・・・。
「東条ー!貴様も同じといったところか。だが、けしからん。我から気を散らすな!」
「失礼しました。教官」
いきなりアヤナの名を呼ばれ、驚いた。すると同じ准士達の視線がアヤナに向いた。アヤナは椅子から立ち上がり姫城に謝罪した。
「よい。座れ。さてこの矛盾の答えは以外に単純だ。光ある所に闇はあり。ということだ」
ハッとなった者もいればチンプンカンプンな者もいた。ちなみにアヤナは前者でサクヤは後者である。
(なるほど!・・・でもサクヤはわかっていないみたい)
アヤナはサクヤの方を見る。サクヤはアヤナと同じ行の席にいた。ちらっと顔をサクヤに向けると、困惑な表情をしている。それに姫城も気づく。
(・・・。東条が教えるだろう)
姫城はサクヤのことは東条に託して、説明を続ける。
「前期の試練を行う”穢れの岩戸”は闇が充満している。これに耐えられるかを試すものだ。それもこれより日が沈むまで」
准士達の表情が不安気味である。アヤナも同じである。嫌な予感しかしない。そして、場面は戻る。
(アマさんもこれをクリア出来たってこと・・・)
「今から封印を解く!貴様ら少し下がっていろ」
姫城は圧気を高め、祝詞を読み始める。そして水波が重厚な門を苦労せず開ける。すると、闇が溢れ出してくる。
「奥が暗い何も見えない。でも暗いだけじゃない!」
アヤナは門の奥を見る。見ているうちに恐怖が自分の中で増してくる。しかし、負けずに圧気で跳ね返そうとする。
「さぁー入れ!試練開始だ。一つ貴様らにアドバイスする。・・・己を見失うな!健闘を祈る!」
准士達は恐怖を感じながらも入っていく。奥に進むにつれ、闇も深くなり恐怖も比例して増していき、闇に取り憑かれそうな者もいた。それを仲間が必死に呼び止めようとする。ライトが支給されているが、その光すら闇に飲み込まれている感じがある。
「あいつが来ていないが!怖気付く奴ではないはずだが」
「そうですね!」
あと一人、門に入っていない者がいた。姫城と水波が相談していると後ろから走ってきた。
「すみません。トイレに行ってました」
「まぁいい。入れ」
「はい」
残り一人が門に入っていった。すぐ後ろ姿が見えなくなる。
「これ以上闇が漏れ出すと、島の調和が崩れる」
姫城が言うと、二人は門をすぐさま閉め、札で封じる。
「さて、どうなるか?」
「そうだな!」
水波と姫城が閉じられた門を見つめながら言葉を口にする。

 准士達は基本的に二手に分かれている。奥に行くグループと門の近くで留まっているグループ、アヤナは前者でサクヤは後者。ライトで辺りを照らしながら歩いていると、骸骨や動物の死骸が転がっていた。それを見ると叫んでしまう者もいる。これも克服せよという意味もあるのだろうとアヤナは思った。とにかくこの場は闇、恐怖、絶望、死が漂っている。強気で行くアヤナにもとうとう異変が起きてしまう。頭を抱えだし、もがき苦しむ。周りいた仲間もアヤナの名を連呼するが返事がない。ひたすら苦しんでいる様子。それはアヤナだけではなく、ちらほらいた。
「あの時と同じ・・・」
そう。アヤナがこの世界に来た時に見た光景が再び蘇ろうとしていた。
「もう、あんな自分・・・助けて!」
その言葉を呟くと瞬間、気を失ってしまった。周りの仲間が声をかけ、体を揺さぶっても起きる気配は無い。そして、時々体を動かし、苦しんでいる様子は悪夢を見ているような印象を受ける。一方、出口の付近にいたサクヤにも闇の力が迫っていた。
トントントン
後ろからゆっくりと足音が聞こえ、サクヤの横に立つ。
「ふん、みんな闇にやられて!雑魚ばっか。あんたもそろそろかな!」
この闇が充満している環境で平然としている。遠くからアヤナのうめき声が聞こえてくる。
「この程度とは!」
「東条さん・・・」
その時、サクヤにはアヤナが「助けて!」と聞こえたような気がした。そしてサクヤも・・・。

 アヤナに襲ってきた闇はアヤナの暗い過去をエグリだそうとしていた。それはまず中学3年生の頃まで記憶を遡らせる。場面は地方大会優勝に向けた稽古。優勝すれば全国。同級生や下級生と防具を着込んで打ち合っている。剣道場には自分に気合を入れたり、相手に自分の気迫を見せる為の声が剣道場内を飛び越えて外まで響いた。アヤナは女子剣道部の主将である。後輩達からはよく慕われていた。強さはもちろんのこと、後輩の面倒見も良かった。
「先輩、先に帰ります」
「うん。気をつけて!」
放課後の部活が終わり、アヤナが後輩達を見送っている。同級生達も帰る。
「アヤナお先にー!」
「アヤナ、大会絶対勝ちに行こうね!」
「もちろん。最後だもん」
同級生二人と軽い雑談をして見送ると、当然後ろから声をかけられる。この女子剣道部の部長である。特徴としてはメガネをかけていた。そして表情からして真面目という印象を持つ。
「勝って今度こそ全国にいくよ」
「びっくりした。・・・あなたも負けないでよ!」
部長として後片付けのチェックをして、終わったところアヤナが同級生を見送っている姿が見えたので後ろから声をかける形になった。
「あの竹刀って前に話していたけど、アヤナのおばあさんが買ってくれたものでしょ」
「あれで試合に出るよ。でも、もういないけどね」
「・・・」
アヤナが剣道場の壁に立てかけている竹刀や防具はおばあさんに入部の記念に買ってもらったものである。しかし、そのおばあさんもアヤナが一年生の三学期の頃に亡くなっていた。
「あっ、ごめん。また気を使っちゃった?」
「そんなことない。優勝して良い報告しないとね」
「うん!」
アヤナは笑顔で言う。そしてその後、見事アヤナは優勝を果たす。みんなで喜びあった。アヤナの中学校の剣道部では初優勝である。それからアヤナと部長にはスカウトの話が来た。大会会場でアヤナ達の見事な闘いをスカウトは見ていた。そのスカウトは剣道で有名な強豪校でインターハイの常連である。全国大会の試合の内容でスカウトが確定するという。
「高校でも一緒に。アヤナ」
「うん。一緒に!」
高校でも剣道で一緒にやっていくことを確かめ合った二人。同級生や後輩達もその話を聞いて祝福する。顧問の先生も「頑張れよ!」と応援してくれた。しかし・・・。

「ただいま」
と言っても、いつもなら返事など返ってくるはずもない。というのも両親は滅多に家には帰ってこない。父親は不倫とDVで母親は夜の仕事をしていて男を作って、家には寄り付かない。そんな親でもアヤナは好きになろうと努力していた。たった二人の親なのだから。
「てめぇー、どこいってたんだよ」
「今日剣道の大会だったから。それでね優勝したの!」
父親は酔っ払っていた。いつも酔っ払っていることがほとんどである。アヤナは父親に恐怖を持ちながらも笑顔で優勝を報告した。褒めてもらえることを信じて。
「あっそう」
結果は素っ気ない。アヤナの優勝に何とも思っていない様子である。最後の期待は裏切られ、落ち込む。その様子にすら気に止めなかった。
「・・・」
「テメェーはもう女の体。俺に味わらせてもらうぜ。その為にテメェーをなぁー」
いきなり、アヤナの手を引っ張り、リビングのソファーに寝かせる。
「何するの。私達親子でしょ?」
「ハァー親子。そういやー言ってなかったな」
アヤナは服を引き千切られ、裸体の状態になる。父親はニヤニヤする。
「やめて。やめてぇー!」
大きい声を出そうとするとガムテープで口を三重にも塞がれる。そして、手を縛られた。
「黙れ。さぁー収穫、時だ!」
アヤナは頬を殴られた。抵抗が出来ないし、大声出そうにも封じられている。そして父親はパンツを脱ぎ、その夜アヤナは父親に奪われてしまった。
「今までで最高だったぞ。我が娘よ!またやるからな。それと・・・」
父親の表情は快楽に満ちていた。アヤナの表情を見ると大粒の涙流している。
「テメェーは俺も娘なんかじゃねぇーよ」
アヤナは驚愕の表情をしていた。父親を目を大きく見開いて見ている。
「ジロジロ見るな。テメェーは拾い子だ。施設からなぁー」
再び、頬を殴られてしまった。
(え!何よそれ。どういうこと?)
「そういうことだ。これからよろしなぁー。俺の肉便器!」
(ふざけんじゃないよー)
アヤナがそう思うと、突如として縛られた手の縄は切れた。アヤナは口のガムテープを取り外し、ソファーから立ち上がる。父親はそれに驚くがアヤナのその態度にムカついた。さらに殴ろうとするがアヤナが手で止める。アヤナはものすごい形相で睨みつけた。そしてアヤナは人生で一度も使ったことが無かった言葉を使う。
「殺す!」
殺意をむき出しにした。養父はその一言に恐怖し、完全に酔が覚める。アヤナの手をほどき、外に逃げ出す。そしてその時を境にアヤナの心が歪み始めた。学校に行かなくなった。
全国大会も控えている中、心配になり剣道部の部長はアヤナの家に行った。インターホンを押しても出てこない。しかし、ドアは少し開いていたのを気づいたので玄関に入った。
家の中は汚れていて物は散乱としている。
「誰かいますか?」
部長は大きい声で家の中へ呼びかける。すると、階段から降りてくる足音がした。アヤナの制服が破けていた。
「・・・」
「何があった?その格好は?剣道何でこない。学校も。もう全国大会でしょ!」
「もう、やめるから。あんたとはさよなら!」
「何言ってる。全国で行って、剣道の強豪に行くんじゃないの」
アヤナの表情は呆然とし、ただ部長をみているだけ。
「うるさい-!」
アヤナは友人いや剣道の戦友に信じられないことをしてしまう。何と飛び蹴りを食らわせてしまった。もちろん倒れ込んでしまう。部長は信じられないという目をしていた。
「何するの?」
「私にかまうな。早く私の視界から消えろ!」
部長は立ち上がり、アヤナに一言告げる。怒りと悲しみの混じった表情で。
「さよなら」
「・・・」
アヤナは部長の後ろ姿をただ無表情で見つめている。部長がいなくなり、数分時間がたってからアヤナの目から涙が流れていた。
そして、その後部長と顔を合わせることもなく、もちろん剣道もやらない。勉強の方は高校受験を控えているのだがそれもやらず、成績は以前と比べてだいぶ落ちてしまった。選択肢は限定され、成績相応の高校へ行くことに決まる。あれから、生活は荒れ、夜も徘徊するようになる。さらに、養父だけでなく養母とその愛人にも暴力を振るわれるようになる。警察に駆け込もうにもそうすれば引き離され、施設に戻ることになってしまい自由に出歩きが出来なくなってしまうことを考えた。アヤナは卒業式に出ず、春になり高校に入学した。高校の印象は不良・ギャルが多いがそこそこのレベルの高校である。夜、いつもように徘徊していると同じ高校の制服を着た高校生に声をかけられた。見た目は制服を着崩して、男子高校生の方は髪を染め、ピアスを、女子高生はそれぞれ茶髪金髪でメイクが濃いのが特徴である。
「今日上級生ぶっ飛ばしてたよね?」
アヤナは態度ムカつくからと上級生のギャル達に因縁を着けられていた。あまりにもひつこいので蹴り飛ばして、腹を足でニヤッとしながら踏んづけていた。
「あんたらも?」
声をかけてきた不良達を睨みつける。一人のギャルが慌てて否定する。
「違う。その逆、つるまない?おもしろいことがしたいから」
「それって?」
それについて聞いたアヤナはニヤッとした。
「いいわ!あたしはアヤナ。よろしく!」
ギャルの進めでアヤナは髪を金髪に染め、耳にピアスをし、指にはつけ爪のマニキュア、そして今までしたことが無かったメイクも始めた。メイクはギャル達と同じく濃く、唇はギラついている。そのギラついた口とすっかり容姿が変わってしまったアヤナがニヤッとして。
「これが本当のあたし。これからあたしに逆らう奴は・・ウフ!」
東条アヤナは容姿も性格も別人になってしまった。かつてのアヤナはいなくなってしまったのだろうか?

 場面は一年が経ちアヤナは高2になった。不良・ギャルの後輩も出来き、周りから不良グループのリーダーとして恐れられるようになる。校内では上級生も含めてアヤナ達に逆らう者がいなくなっていった。なんといっても女でありながら強いからである。アヤナ達のターゲットは弱い者にも及びイジメをするようになってしまった。そして段々とエスカレートし、外でお金を目的とした恐喝、暴力事件、グループ抗争など、警察のお世話になることも。しかし、やめることはない。この時、グループを除く第三者から見て、アヤナは性格がおかしくなっていた。家に帰ることが少なくなっていったアヤナもグループと別れて帰る時があると、容姿に似合わず下を向いて沈んだ表情で帰っていくことがある。

―とある廃墟周辺
「あたしにヒザマづきなさい。そうすれば許してあ・げ・る!」
アヤナはグループ抗争で今、相手のグループのリーダーの身体を踏みつけている。その男のリーダーは恐怖と苦しみを与えられていた。しかし、さきほどまではアヤナのグループが劣勢であったがある出来事が形勢を逆転させてしまった。
「メスが調子に乗るなぁー」
アヤナは電柱に押さえつけられていて、追い詰められていた。グループの仲間は逃している。相手のグループの仲間もやられていた。空を見れば黒い雲に覆われていた。遠くの方では雷も聞こえてくる。
「お前をあたしに逆らえないようにしてやる!」
「それが調子に乗ってるっんだろーがぁー」
アヤナの身体のあちこちに暴行を加える。少しアザも出来ていた。しかし、決して涙を流すことはない。
「お前を倒せば、この辺であたしに逆らえる奴はいなくなる」
「ちっ、もういい。無駄口をほざけ無いようにしてやるよ!」
(あたしは負けられない)
相手にトドメを刺されそうなところで、辺りがピカッと光る。その後、ものすごい音がした。尋常ではない鼓膜が破けても不思議ではないレベル。相手の男が顔を上げると、アヤナを押さえつける為の電柱が黒く、焦げの匂いがしてきた。そして辺りは停電している。アヤナを見ると立って下を向いていた。
「おい!」
「ウフ。力がみなぎってくるわ。もう、あんたもお終いね!」
「はぁ、今ので頭おかしくなったか?」
アヤナは不気味な雰囲気をかもし出している。だが、次のアヤナの動作で一気に周辺の空気と雰囲気が変わる。
「・・・」
アヤナが顔を挙げた瞬間、それは始まった。相手の男はアヤナを見ただけで恐怖に襲われてしまう。動物的感覚としてまずいという感覚である。
「今なら負ける気はしない。あたしにヒザマづくか、やられるか。どっちにする?」
「逃げるに決まってんだろ」
相手の男は不利なるとわかり、とっさに逃げ出すが今のアヤナからは逃げられない。すぐに追いかけ捕まえてしまった。
「逃がすわけないじゃん」
アヤナは捕まえた男を地面に叩きつけた。そして、身体を踏みつけている場面に戻る。
「許してくれ」
男は助けを求めたが。
「アヤナさん、俺たちがやらせてくれ!」
逃げていた仲間がひょこっと戻ってきた。
「あたしもやるぅー!」
仲間のギャルもリンチに参加しょうとしていた。
(もうやめるつもりだったけど・・・)
「殺しちゃダメよ」
「わかってるって!」
そして、これによりアヤナ達はこの辺りのグループ抗争に勝利した。逆らう者がいなくなったので、今度は弱い者を狙うようになってしまう。難癖をつけたり、脅したりと立ちの悪いことまで手を染めるようになってしまった。これはアヤナが思いついたわけではなく、不良の仲間の提案だった。アヤナも最初はさすがにそこまでとは思っていたが、仲間達が弱い者を追い詰め、苦しんでいる姿を仲間達の後ろで見ている内に次第と面白く快感に感じて来てしまう。心の感覚が狂いそして、不良行為がエスカレートし、警察のお世話になるまでになってしまった。
さらに半年以上経過し、アヤナは高2の終わり全ての始まりの日のあの夜。アヤナ達は電車に乗っていて、着信音を寝ていて止めないスーツの青年と出会う。
(ムカつくなぁー)
「アヤナ、あいつうぜぇーからしめるか?」
アヤナ達はその青年の後をつけ、公園で誰かと話しているのを観察し、人気の無いところで青年をリンチして金をせびろうとした。だが、その青年とバトルになり、追い込もうとしたが公安を名乗る男に青年への攻撃を素手で止められてしまう。そして、その男はアヤナに一言告げる
「でも、本当は君・・・」

場面は元通りに戻る。今、倒れ込んでいてアヤナに闇の力が迫っていた。もがき苦しんでいる。自分の闇の向かい合い、闘っているのだろう。
「助けて・・・もう嫌なの!」
アヤナは小声を漏らしている。闇の誘惑がアヤナも含め、今気絶している准士達に襲っている。
「アヤナちゃん・・・自分を見失わないで!闇に負けないで!」
その声を聞いて、アヤナに一筋の光が差し込んできた。少し苦しみが治まっているようである、アヤナの顔が少し穏やかになった。その声の人物はさらに続ける。
「乗り越えたよ。あなたはここで終わっちゃうの!私より雑魚?」
その声の人物はうなされているアヤナを煽った。

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