第十三話 アヤナの入所試験


 船は島の港に着く。この島は”聖ノ島”で民兵団アマテラスの戦える巫女を育てる為の学校”養兵所”がある島。日本本土から少し離れた場所にあり、とにかく自然に囲まれているのが特徴で男子禁制の島である。アヤナの周りには女子しかいない。船を降り上陸すると周りは全員で五十人くらいはいた。
「書類を提出してください」
小屋から女性が現れ、書類を出すように言ってきた。アヤナは大巫女からの書類一式が入っている封筒を女性の受付らしき人に手渡す。
「確認しますね」
中身を一通り、確認する。女性はアヤナの推薦書を見て、目を見開いた。
(ん?)
「何かありました?」
アヤナは女性の表情が変わったことが気になってしまったので、聞いてしまった。
「え?大丈夫。安心して!」
(まさか、この子が・・・)
女性は驚いていた。推薦書に驚く何かがあったことは確かである。女性の受付の人が五十人くらいの書類をチェックが終わるまで待つことになった。

 出発の日、アヤナは試験について先輩の久木天音から話を聞くことになった。
「試験は本土から離れた島で受けることになっているの。それなりの人数が受けに来るけど、合格できるのはごくわずか」
「難関じゃないですか?」
アヤナは入所試験の過酷さを知る。アマネはアヤナの言葉にうなづき説明を続ける。
「受けに来る子達は、アヤナちゃんも含めてそれなりに社で見込まれている子ばっかり、それでもあの試験を合格するのは難しいの。私もギリギリ何とか合格できたの」
そして、数日が経ち、世話になった社を立つ時が来た。鳥居の所でアマネが大巫女とアマネと向かい合っていた。服装は高校の制服で格好は軽く着崩している程度である。元の世界でのギャルギャルしい感じはだいぶ落ち着いてきた。
「あの時と比べて、だいぶ落ち着いたのぉー。最初、お主を見た時はびっくりしたぞ!」
「そうですね!」
アマネはアヤナを眺めながら言う。
「それを言わないで下さい!」
アヤナは視線を下に落として、恥ずかしい素振りだった。
「みんなもお主の為に見送りに来おった」
大巫女にそう言われて後ろを振り向くと、階段の下には町の人達が集まっていた。アヤナは驚いていた自分の為にこんなに集まってくれているなんて。アヤナはここに来てから町の人たちと交流があった。
「こんなに・・・」
「みんな、あなたを応援しているわ。実は私が伝えたの!」
アマネは、事前にアヤナがここを立つことを町の皆に伝えていた。
「だから、みんな!」
「それだけじゃない。あなたが好きっていうのもあると思うの!」
「さぁ、行くのじゃ」
大巫女に言われ、大巫女を見て、頷く。
「いってらっしゃい。がんばるのよ!あなたなら出来る!」
「行ってきます。アマさん、大巫女様」
アヤナは階段を駆けて降りていく。下に降りると、応援の言葉をいろいろと駆けられた。ある一人の女性の老人が杖をついていた。
「がんばっても、がんばっても諦めずにがんばって失敗してダメだったら、帰っておいでな。大巫女様も含めてみんな出迎えてくれるはずだから」
「ありがとう。やれるだけやって見せるから」
そして、とある港行きのバスの時刻が迫ってくる。街の少し外れに停留所がある。
「みんな、ありがとう。行ってきます!」
アヤナは明るい元気な声で皆に返事をした。そして、停留所へ走って言った。あっと言う間にみんなの場所から遠ざかる。圧気による力のコントロールが上達しているようである。
大巫女と天音は街外れの方を見ていた。すると、バスが上に徐々に上がり港の方向へ遠ざかって行った。この飛行バスはこの世界のテクノロジー。アヤナの元いた世界ではあり得ない。アヤナも最初見たときはびっくりしていたが、今はバスが浮かぶことには慣れていた。
「やっぱりさみしいですね」
「そうじゃのー。また、二人になってしもうたな」
アヤナは飛行バスで窓の方を見ていた。元の世界ならばスマホをいじっているところだが、ここでは通信が使えない。遠くの方にはドーム状の建物が見えた。上空からだと大きいのがよくわかる。
(あれアマさんに聞いとけば良かった。忘れてたぁー)
アヤナはぼんやり見ながらそう思った。そして、しばらく時間が経つと海が見えてくる。目的の港には大きい旅客船がある。
「あれね!」
アヤナは小さな声で呟いた。

アヤナが出発の日のことを思い出し終えると、ハッと我に帰る。試験官の方を見ると、まだ書類を確認していた。そして、一人の女の子が目に入った。
向こうが振り向いたことによって、目が合う。向こうはすぐ目を逸し、向こうを向いてしまおうとしたがアヤナがとっさに声をかけた。
「あんた?」
「・・・」
アヤナはつい汚い口調で言ってしまう。向こうは少し怯えていた。しまったと思った。
(前の時の癖が。こうゆう子を見るとつい口調がなぁー・・・)
アヤナは元の世界でギャルだった時に、弱そうな子に対しては口調を強くして最悪、脅してお金を巻き上げるようなことをしていた。こっちに来てからはそれらのことを思い出し反省するようになった。
「ごめん。怖がらせるつもりはなかったんだけど」
「・・・」
(え!)
その女の子は返事をせず、別の所に言ってしまった。これにはアヤナもびっくりする。
「前だったら、間違いなくシバいていたなぁー」
アヤナは周りを見回して見る。事前に聞いたとおり、女性しかいない。それがこの”アマテラス”というところである。一部の女の子同士は話し合っていたが、他はジッと待っていた。
「諸君、しばらく待たせました。そこの喋っている君たち、失格です。お帰りなさい」
一部の女の子達の笑顔がその言葉で瞬間的に呆然とした顔に変わってしまった。
試験官の女性は受験の書類の確認が終わった。受験生を見るとほとんどが大人しく待っていたが一部がケラケラと笑っていた。それに対する一言だった。
「どうしてですか?」
一部の女の子が代表した形で言った。その顔は焦っている。
「あなた方は社で何を習って来たのですか?この時間は談笑する時間ではありません。他のみなさんこの時間を理解していた。あなた方はそうではない」
大声で怒っている様子でもなく、冷静に淡々と話す。それが逆に怖い感じである。
「それで失格だなんて、あんまりです!」
「今のあなた方では訓練で死にます。だから、失格なのです。覚悟がない。それだけです」
「・・・」
一部の女の子達はそれ以上なにも言えない。場の空気は緊張感に包まれている。アヤナは唾を飲み込むのはやっとであった。
「出直しなさい!」
「はい」
沈んだように返事をする。試験官はただ女の子達を見つめている。
「お気の毒にって感じね。圧気は激しく無いんだけど、でも怖い!」
アヤナはちらちら目で辺りを見ると、さっきの女の子、黒のおかっぱ風で長髪な女の子がブルブル震えていたのを見つけた。
(あの子何でここに来れたか。わからないわ)
ここを受験するには各社から推薦されなければ、受けることができないのに、このような女の子が推薦されたのかアヤナは疑問に思う。
「さて、皆さん。この島に入る前に禊をし、穢れを祓います。私について来て下さい」
試験官の後ろをついて行くと、岩場の多い浜辺に連れて来られた。そして、目についたのは祠である。どうやら神様を祭っているようだ。
「白装束がそこにあるので、着替えてください」
そう言われたので、皆着替えた。
「着替えたようなので、さっそく入って下さい。私は祠に奏上します」
試験官は祠の前に行き、地にひざまづき祝詞を読み始める。すると、オーラのような圧気が放たれていた。辺りは神聖な空気に包まれ、さらに海水の力で浄化されていく。
(体が軽くなるし、社の時の修祓とは桁が違うわ。それにあの試験官、とんでもないわね!)
アヤナは海水に浸かりながら、試験官を見てそう思った。

 禊が終わり、服を着替えたアヤナ達は試験会場に連れて来られた。そこは運動場のような広場である。向こうには学校の校舎のような建物が二つあり、横には体育館があった。奥の方には大きな山がある。
「今から試験を始めます。内容は簡単、私の圧に耐えられるかどうかです」
受験者達の反応は、緊張している面持ちである。アヤナもゴクリと唾を飲み込む。しかし、首を何度か横に振り。
「こんな所でつまずいたら・・・あいつにたどり着けない!」
「一応聞きますが、辞退をする人はいませんね」
試験官は受験者の方を見回し確認する。不合格をしてしまうと、自分の経歴にキズがつく場合があるからだ。
「いないようですね。さぁー、始めます。倒れ込んだら不合格です!」
そう言った瞬間、試験官の雰囲気と目つきが変わった。圧気がすさまじく放たれた。睨みがとにかく強い。これだけで気圧される感じですでに倒れ込んでしまっている者もいた。受験者の表情は苦しい、辛い顔である。アヤナも同じであったが、そこから自分の圧気で跳ね返そうとしていた。
「いつまで続くのこれ?」
周りは時間が経つごとに倒れていく中、アヤナはある一人が目につく。その一人はアヤナがさっき話しかけた少女、オカッパ風の髪をした少女だった。見ていると辛そうな状態が特に伝わってくる。辛いのは周りの受験者も同じではあるが、なぜか気にかかった。アヤナはあの少女の後ろにいる為、表情はわからない。
「以外に根性があるみたい。わたしも負けてられない!」
それから、一時間ぐらいは経っただろうか?受験者の半分の人数が倒れ脱落した。おおよそ二十名近く残っている。
(へぇー、今回は根性ある子が多いかしら。でも、あの子・・・)
試験官の女性は圧気を放出しながら、そう思った。圧気の放出は全開ではなく大体半分くらいの力を彼女は出していた。彼女がそう思っていると先頭の方にいるおかっぱ頭の子に目がいく。
その少女の様子は今にも倒れてもおかしくない状態。そして、ついに倒れようかというところで・・・。
「ねぇー。諦めんの?あんたはここで終わり?他と一緒で雑魚ってこと?」
アヤナはつい少女に向かって、声を張り上げて煽ってしまった。無意識になぜか。
「雑魚だってぇ?わたしを馬鹿にしないでぇーー」
少女は絶叫した。周りはアヤナに少し苛立っている様子であったが、少女の叫びで驚きの表情である。それから少女の圧気は持ち直した。
(え!何言っているの、あたし?)
アヤナは自分の口にしたことに後から驚く。口調が元の世界に使っていた時になっていたからである。そして一部始終を注意せず静観していた試験官は。
(今ので持ち直したみたいね。周りの子も影響されて、持ち堪えられている。あの子確か・・・)
試験官はあのアヤナの推薦状のことを思い出していた。何かあるようである?
(これは楽しみかもね?さて)
試験官は圧気の放出を止めた。辺りの圧迫感は消える。
「終了です。私語はありましたが、今後は無いように。合格おめでとう」
すると、皆一斉に倒れ込んでしまう。不合格した者達は船で帰される。それから休憩した後養兵所の所長が現れ、挨拶した。所長は老齢である。そして代表で合格者の少女が読み上げる。

「我は大神天照にこの身を預け、全身全霊で皆の為に闘うことを我誓う」
残りの者は続けて復唱する。すると、突如押し潰されるような感覚に襲われた。睨みなる力”圧気”による者である。さきほどとは比べものにならない。殺されそうな感覚。元の世界で襲ってきた少年の圧気に匹敵するんじゃないかとアヤナは思った。アヤナ自身も相当辛い。さっきの試験の疲労もある。そして、合格者達の前に瞬間敵に現れた人物。それにアヤナは驚いてしまう。
(なんなの?試験は終わりじゃないの?)
その人物、容姿は少し露出のある鎧を着込み、髪は肩にほど長い。顔は整っていて美しいのだが目が常にキリッとしていて怖さを感じてしまう。アヤナはさきほどの感想を撤回した。今、唾を飲み込むのがやっとである。周りはすでに倒れ込んでしまっている者もいた。
「おめでとうなどと貴様らに言う気はない。我の仕事は貴様らのか弱き乙女根性を叩き潰すことだ。女を捨てろとは言うまいが、それなりに覚悟しておけ。それと我が名は姫城、貴様らの主任教官だ。いいな?」
「・・・はい」
合格者達は姫城の問いに遅れて返事をする。
「これって、まずいパターンじゃない?」
アヤナがそう思った瞬間、怒声が飛んでくる。
「遅えんだよ返事がぁーーー」
さらに、合格者達が一斉に倒れこむ前にギリギリ持ちこたえた者がいた。その者は姫城と一瞬目が合い、バタンと倒れ込んだ。恒例の合格者への洗礼である。
「おっと危ない。我の圧気に耐えられた奴は久しぶりだ!ようこそアマテラスへ、東条アヤナ」
意識えお失い頭からいきよいよく倒れそうだったので、咄嗟に姫城はアヤナの体を支えた。そして、合格者達が意識の無い中歓迎の言葉を口にした。

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