第十一話 セイトの初戦と殺し | ディファレント・ワールド

 彼らの様子を上から見ているものがいた。その者は、樹木の上に立って覗いていて、笑みを浮かべている。性別は女性で髪が長く細身で、服装はこの世界の戦闘服に当たる、甲冑を装着していた。その甲冑は露出が激しいのが特徴である。これで女性の体が守れるのかというぐらいに。
「さて、どうなるか?ふふ」
この存在に下の対立している両者は気づかない。彼女が気配を消しているというものあるが、まだ、気配感じ取れるまでの実力がないというところが、現状である。
「いつまで、耐えられるか」
敵の三人の一人が挑発して来ている。実際の所、聖斗達は押されている感じである。表情にもそれは表れていて、それを敵に突かれてしまっていた。周辺の空気はバチバチしている。
「二人共、大丈夫か?」
ジンは聖斗とエリに敵の様子を伺いながら聞いた。こちら側の力が弱まってきたからである。
「何とか」
「そろそろ」
聖斗、エリの順に返事が返ってきた。この状況に限界か近づいていた。敵もどうやらそのようである。
「俺たちに言えることか?」
ジンが、そう言った。すると・・・
「お前の言う通りだから。ここらで、終わりにする。だから・・・・」
その言葉に一瞬、間が置かれ、次に繰り出された言葉が。
「早く死んでくれ」
「断る。死んでたまるか。こんな、理不尽に進んで参加するなんてどうかしているお前らは」
聖斗が理不尽な言葉に対して、拒否する姿勢を示した。その時の聖斗の目は鋭く、相手を威圧する力が以前に比べて上がっていた。苛酷な環境が人を強くたくましくするのだろうと思わせる印象を人は今の聖斗の雰囲気を見れば感じてしまう。ジンとエリはこのお状況でいきなりしゃべりだしたので驚いていた。さらに、しゃべる内容に意思の言葉を聞いたので二人共、思わず目を見開いた。
「聖斗」
ジンとエリが聖斗の名を同時に呟いた。
「バァーカ」
すると、飛びかかるように敵が襲いかかって来た。ジンはとっさに気づき、避けるが、サバイバルナイフで続けて攻撃を仕掛けてくる。ジンもサバイバルナイフで敵のサバイバルナイフを止めた。
「しまった。二人は?」
エリはというと、飛び掛かってくる女に気づき、腕を掴み投げ飛ばそうとする動作に入ろうとするが、逆にそれを利用され、蛇のごとくエリの体に巻き付かれる。そして、サバイバルナイフをエリの首に突きつけた。ナイフが軽く当たって血が少し出てきた。その血を敵の女は舐める。
「やめて!」
「そんなこと言えるかな?」
「・・・」
首元を見たエリは言える立場に無かった。エリの首とサバイバルナイフの距離はほぼゼロ距離である。敵の女はエリの黙ったリアクションを見て、笑みを浮かべていた。エリは身動きが取れない状況である。
 一方、聖斗にももちろん敵が襲いかかってきた。飛び掛かってくるのだが、聖斗はとっさではなく、正確にそれをかわす。敵の男は地面に落ちた。聖斗は攻撃する為に地面に落ちた敵に近づこうとするが。
「こいつが最初に死ぬよ!」
聖斗は声の方を見ると、エリが体を巻き付かれながら、首元にサバイバルナイフを突きつけられている様子を見た。しかも、若干流血しておりエリの表情は怯えていた。ジンの様子を見れば、ナイフとナイフが交わったまま動いていない。
「よく捕まえた」
地面に落ちた敵の男は、捕まったエリの方へ近づいた。
「へへ。こいつ血がうまいんだよ!」
「食ったらうまいな。このメスは」
そして、いきなりエリの腹を殴り、顔面を殴った。エリの鼻からは血が出てきた。さらに顔面が内出血を起こした。余程、殴る力が強かった証拠である。やられているエリではあるが、弱いわけではない。殴られても泣き喚くことがない。この試験に選ばれることだけはある。
突如として、風が吹き始め、落ち葉が舞い上がる。敵の男と女は聖斗を見ると、眼光が鋭さが増していた。殺気を纏っている。ジンもそれに息をのんでしまう。
「おい。離せ!二人でエリをやりやがって。ゲスだー。こんな理不尽、俺が許さねぇー」
聖斗は飛び出し、勢いよく相手の男を攻撃した。その攻撃によって吹き飛ばされる。そして、飛ばされた方へすぐに行き、お腹めがけて、肘を落とす。その衝撃がすごいのか相手の口から血が出てきた。敵やジン達は夜で辺りが暗いので、聖斗がいる方が見えず、何をやっているのかよくわからないでいた。
「女は解放するからやめてくれ。俺たちは本当はこんなこと。生きる為に・・・」
相手の男は苦しんでいる表情を聖斗に見せた。
「エリを放すように、あの女に言うんだ。いいな?」
「ああ、わかったから。先に行ってくれ」
聖斗は背中を見せ、先にいこうとするが、これがまずかった。
「んわけないだろ。バカが。お前を喰うのは俺だ!」
相手の男はサバイバルナイフを取り出し、力を纏い背中を刺そうとするが、その声を聞いて聖斗はとっさに後ろを振り向いた。その時に、かわそうとしてナイフが上腕にかすって、服が切れるどころか、皮膚まで切れて血が少し出てきた。これが、この世界の特殊な力の威力である。
(深くなくて良かった。こいつはもう・・・)
そして、かわしたところで、そのまま相手の腕を掴み、ナイフを取り上げた。逃げられないようように首に腕を巻き付け拘束した。
「くそがぁーーー」
相手の男は雄たけびを上げた。その声を聞いた。ジン達は・・・
「倒したのか?」
「聖斗」
ジンと力の均衡状態が続いている敵の男と女は
(やられたのか。つかえねぇ奴)
「・・・」
敵の女は声がした方向を見ていた。
「仲間がやられたようだな。助けには?」
「この状況で行くわけない。行ったらお前が攻撃するからな」
ジンと相手の動きにも変化があるようである。
「いつまでも、このままじゃいられないから。行くかぁ」
ジンの力が上がっていく。すると、ジンの周りが急激に熱くなっていく
「暑い。夜なのに何で暑いんだ。そうか、お前の亜人その力か?」
「そうだ。離さないと大やけどすることになる。まだまだ、熱くするよ」
相手の男は仕方なく、ナイフを離し、後ろに下がる。
「このままだと、あいつに近づけなくなる。だったら、俺も」
そう言うと、亜人としての力を上げ始めた。何かをするようだ。
「待つわけないだろ」
ジンの瞬発で相手と距離を縮め、サバイバルナイフで攻撃した。ナイフの突きで仕留めようとするが・・・
「遅かったな」
敵の男はジンのナイフを突き刺さる手前で握る。しかし、切れて血が出るわけでもなく、熱で大やけどするわけでもなかった。その手を見ると、火を纏っていたからである。
「火の力」
今度はジンが後ろに下がった。戦略を見直さざる負えなかったか。敵の火の力とジンの熱の力は違うようで、触れれば熱いという性質は同じようなものである。
(やっかいな相手だ。さて、どうする?やんなきゃやられる)
「このステージで使うことなるとは。この力にあまり慣れていないんだ。早くやられてくれ」
「お前らの仲間、連れてきたけど。どうする?」
暗闇から聖斗と捕まった男が出てきた。
「すっすまねぇ」
「役立たずが。お前はいらないから。とっとやってくれてかまわない」
「そんな。助けてくれよ」
捕まっている男は助けを求めたが、拒否されてしまった。
「仲間まで。何て奴なんだ。お前は?」
ジンは相手の男を見て言った。すると、聖斗がリンにサバイバルナイフを突きつけている女に向かって話す。
「リンを解放してくれ。まさか、君まで見捨てないよね?」
聖斗は口調を緩めて相手の女を説得しょうとする。
「彼の言う通り、そいついらないから好きにして頂戴」
表情は笑みを浮かべている。聖斗はいかれていると思った。
「いかれんてんな。お前ら」
「そうね」
相手の女が返事をした。それを聞いて相手の男もニヤッとしている。
「こんなことやめましょー。オロチの手のひらで踊っているだけじゃない」
「黙りな。次余計な口だしたら、突き刺して殺すわ!」
「・・・」
エリはこれ以上、何も言う事が出来なかった。相手の女が話出す。
「この膠着状態が続けば、決着がつかない。決着がつかなければ、みんないずれ殺される。
だから一旦リセットしましょう。無条件で。そして仕切り直しでバトルロワイヤルを」
それを聞いた相手の男と聖斗に捕まっている男の反応は。
「それでいい。よく思いついたな」
「そうしてくれ。今度こそ殺す」
「あんたを別に当てにしてないから」
捕まっている男が威勢のいいことを言っているが、それには相手の女は期待していないようである。一方、聖斗達の反応はというと
「ジンさんどうする?俺はいいが」
「そうしよう。こんな状況じゃ、エリも辛いだろうし」
そして、聖斗達も敵の提案に応じることにした。このままだと状況が動きそうにもないからだ。ジンと聖斗はそういう見方をしていた。聖斗と相手の女は同時に拘束している敵の人間を解放した。
「ありがとぉ。聖斗とジンは大丈夫なの?」
「俺は顔に切り傷ぐらい。感謝ならある意味あいつに言うべきかもな」
「俺も大丈夫!」
ジン達は相手を見据える。向こうも同じである。両者は自然と距離を取って、向かい合う。
それを樹木に立って聖斗達を見下ろしている女は・・・
「さて、どうなるかしら?」
表情は面白がっている様子でまさに高みの見物である。

静寂だった樹林が火で燃える音に包まれている。ジンと闘っていたリーダーの男の攻撃
によるものである。おかげと言っていいのか、辺りは明るかった。
「やってくれたな。これじゃあ両方共お陀仏じゃないか?」
「お陀仏になるのは、お前らだ!」
聖斗が怒りを込めて言った。樹林が燃え煙が立ち込めていたからである。息が苦かった。
時間はあまりかけられない状況である。リーダーの男は手に火を纏い、攻撃を仕掛けよう
とする。聖斗が一歩前に出る。
「今度は俺がやります。ジンさん」
「そいつは強いぞ!火の力を使いこなしている。君よりも」
ジンは聖斗では荷が重いではないかと思っていた。確かに聖斗はこの一週間で成長はして
いるのだが、この男に叶うかどうかというと疑問があったからである。
「この状況をみればわかります。でも、こいつは俺の手で倒したいし何よりこの理不尽な奴を許せねぇーんで」
「そうか。任せるよ。でも、きつくなったら・・・」
「そん時は、お願いしますよ!」
聖斗は睨みの力を込める。意識すると風が集まり、手に風を纏った。
(ジンさんから聞いた。圧気という力。そして、俺は亜人というものになってしまった。
あの時に)
この一週間の間にジンから睨みなる力、亜人が使う圧気の力というもの。通常の人間の上位種として位置づけられているらしい。聖斗のいた世界では一種の超能力者にカテゴライズされる。しかし、元の世界で出会った片桐は否定していた。
「舐めたことホザキやがって、火炙りにしてやるから待っとけ!」
「待つかよ!お前らを早く倒して、ここから出る」
「くる」
「くるわ」
エリと敵の女が同時に叫ぶ。すると、両者の攻撃が始まった。
「その力、もしかして!」
「その通り。同じよ」
エリと敵の女は同じ能力を使っていた。エリはジンと聖斗の後ろに下がる。敵も同じ行動を取った。ここから両者の格闘戦が始まり、聖斗とリーダーの男の殴り合い蹴り合いである。なぜ、ジンが相手しないかそれは、相手と性質が似たようなジンが闘うより、
異質の力を持つ、聖斗の方の戦局が動くのではないかと判断したからだ。
後、もう一人の男の相手は、もちろんジンがやることになった。
「中々だなぁー。でも、最後には死んでもらう」
「死ぬかよ!」
聖斗はそう言うと、サバイバルナイフを取り出す。相手がサバイバルナイフを持っているからである。本来はナイフより素手なのだが、相手が武器を持っている以上聖斗も使うしかない。
リーダーの男から圧力が上がるのを感じた。圧気による力によるものである。そして
「ここからは、本気で潰す!」
体から火が現れ、次第に全身を覆うようになった。
「火だるまにならねぇーのか?」
「俺から火を出しているから。なるわけないだろ。バカが。これからお前を火だるまにして、俺が喰う。そして、お前の風の力を頂く!」
聖斗は目のお前の相手から気になることを聞いた。
「どういうことだ?」
「はぁ、知らねぇのか?常識だろこんなの」
「聖斗、その男の言う通り。死んだ亜人の肉を喰らうと、その力を引き継げることがあるの!」
エリが聖斗の疑問に答えた。
「その女の言う通り。お前を喰らえば、俺は二種類の力を得ることが出来る」
「それは、亜人としての禁忌だ。通常は」
ジンは顔をしかめながら答えた。
「そうだ。通常はな。でも、今は通常か?それにここはオロチだ。許される!」
「だから、テロリスト集団なんだ。人は平気で拉致する」
オロチという集団はここではテロリストとして認知されている。振り返ってみれば、それに納得してしまう。聖斗もそれに同意する。
「とんでもない所に連れてこられた。生き残っていつか抜け出してやる!」
聖斗が決意を述べた。しかし、それを聞いた相手のリーダーの男というと・・・。
「ふっ、それは無理だ。ここはそんな甘いところじゃない。わかってんだろ?」
「そうだな。でも、諦めたら希望はないだろ!」
それを聞いていた。敵の女は一瞬だが目を見開いた。そして、不適な笑みを浮かべた。
「ふふ」
「どうした。レナ。おもしろいか?」
リーダーの男が声を漏らした敵の女性の方を見た。視線が敵の女レナに注がれる。
「あまちゃんだからおもしろいわ。でもぉー、早く殺しちゃって!」
「そうだな。もう無駄口は終わりだ。お前ら!」
すると、火を纏ったリーダーの男が飛び掛かってくる。もう一人の男もジンに襲いかかる。エリとレナはそのまま男たちの闘いを見つめていた。

(全身に火か?長期戦に持ち込んだら・・・)
リーダーの男と聖斗の攻防が繰り広げられているが、聖斗は簡単に近づけないでいた。そして、火の拳とナイフが不規則に交互に攻撃を仕掛けてくる。聖斗も相手の足から崩そうとするがうまくいかないし、何回もやれば大やけどになってしまう。厄介であると聖斗は思った。
「諦めろ。俺らの勝ちだ!」
「!」
聖斗は相手の繰り出す攻撃をかわしている。
「いつまで避けてんだ。火が怖いんだろ?」
聖斗を挑発する。聖斗は一瞬ニヤッとした。何かあるのだろうか?
「何がおかしいんだ?笑える状況じゃねぇーだろ。絶望で頭が狂ったか?」
「・・・」
聖斗は何も答えず。ただ、相手を見ていた。しばらくすると相手の動きが鈍くなってきた。
「やはり」
「?」
そこから一気に相手を攻める。そして、相手は力尽きようとしていた。
「はぁはぁはぁ・・・」
「終わりだな」
相手のリーダーの男は倒れ込んだ。意識は失っていない。聖斗は相手を見下ろしていた。そしてサバイバルナイフを取り上げた。
「力切れでそうなったってことだ。お前の仲間の男はジンさんが抑え込んでいる」
ジンの方を見ると、熱気を指から放ち、首の後ろに近づけて、いつでも当てるという脅しをかけていた。少しやけどをしていて涙目である。
「ちっ、やっぱり役にたたねぇ奴」
「さて」
聖斗はリーダーの男から残る敵の女レナに視線を向けた。
「・・・」
レナは何も言わなかった。エリが前に出てくる。
「私があの女をやる?」
「そいつらを殺して俺たちを早く助けろレナ?」
「助ける?あんた達を。冗談じゃない!」
聖斗達は驚愕していた。男二人も同じである。
「女一人でこの三人を相手出来るわけないでしょ。確実に死ぬわ」
「レナ、裏切りかぁ?」
レナは実質聖斗達に降参をしたようである。このまま闘うのは得策ではない。それだけでなく何より裏切ったのは。
「生き残る為に仕方なく一緒にいただけよ。ここで死ぬわけにはいかない」
敵を裏切ろうとしているレナはさらに続ける。
「気に食わないし、あんた達を仲間の振りをしてただけ。殺戮を楽しみ、喰らってたあんた達にはついていけない。でも、彼らは違う!」
「この女ぁぁぁー」
リーダーの男が叫んだ。裏切りにキレている。しかし、聖斗達が遭遇した時の威圧感は感じなかった。
「これで終わりだ。勝負は着いた。ジンさんどうする。この二人はもう何も出来ない」
「あの女はどうするの?信用出来ないよ。聖斗」
エリはレナを睨んでいた。さっきまでは、立場は逆転で能力も同じ、さらに捕まえられ見下されていたからだ。
「エリの立場ならそうなるだろう」
「協力者は一人でも多い方がいいけど。でも、どうすれば?」
ジンはエリの心情を理解していた。一方の聖斗はレナの言葉を聞いて他の連中と違うと少し信用していた。聖斗の”優しい”ところで同時に”甘い”ところだった。
「一騎打ちで決着を。あの女が勝ったら受け入れるでも負けたら私たちの前から消えて」
「女の子が争うのは見たくないが、仕方ないか。それでいい?」
「・・・わかったわ」
エリが一騎打ちを提案し、レナは少し考えた後勝負を受ける返事をした。聖斗は心は複雑だった。ジンの方を見れば納得しているようだ。そして、エリとレナは一対一で向かい合った。ジンは敵を抑えつけながら空を見上げると、少しずつ明るくなってきていることに気づく。あの見下ろしている女はジンの視界からはたまたま外れていたことを付け加えておく。
「もう、夜明けが近いか。そう言えば、一睡もしてない」
そして、二人を見つめている。敵の男がまた暴れる。
「離せ!」
「黙れ!」
ジンは敵の男を圧気で睨む。すると、大人しくなった。
「いつでも始めてくれ」
聖斗がそういった数秒後に二人はぶつかった。瞬発力で二人は一瞬で距離を縮め、二つのサバイバルナイフが交わった。すると、一方のナイフが弾き飛んだ。そして、ナイフを弾き飛んだ方は座りこんだ。弾き飛ばした方はナイフを突きつける。これにより勝敗が決まった。
「やっぱり強いのね。悔しいけど」
座り込んだのはエリの方だった。レナは座り込んだエリに手を差し出す。
「立てる?」
「・・・」
エリはレナの表情を見て、黙って差し出した。立ち上がるとレナは頭を下げた。
「さっきはごめんなさい。あなたにあんなことをして。言い訳するつもりはないけど、言い訳になってしまうわね。あの二人がこうなる機会を待ってた。こいつらは異常だった。オロチの思想の申し子と言ってもいい。危険だわ。こいつらを倒されることを待っていたけど。みんなやられて、喰らわれた。私も辛かったけど、喰らったわ」
「あいつらと違って、連れて来られたってこと?」
「うん」
ジンは二人の会話がひと段落ついたところで話を始める。もう夜明けである。いつまでもここに立ち止まるわけにはいかない。聖斗とエリはジンの方を向く。
「で、二人共どうする?」
当然、男二人とエリをどうするかということである。聖斗が意見を最初に言う。
「彼女を仲間に引き入れるべきだと思う。裏切るかもしれないと不安かもしれない。でも、俺たちがこの先、生き残るには彼女の力、能力をコピーする力が。俺ももし闘うことになっていたら・・・」
「それはそうかもしれない。俺は聖斗の意見に賛成する。エリ、どうする?」
ジンは聖斗の意見に賛成した。レナの能力は貴重であるし戦力になる。聖斗とジンに抑えられている男二人もここまで生き残れたのは、レナの力が大きかったかもしれない。とジンは考えている。
「・・・いいよ」
エリは少し間を置いて答えた。レナの演技だったとは言え、さっきまでナイフを突きつけられていた。その相手を仲間に向かい入れて、一緒に行動する。普通なら無理である。
(コピーされた力をあっさりと使いこなす。そして、私は一騎打ちで敗れた。これから生き残る為には。なら・・・)
「じゃあ決まり。これからよろしく!名前はええと?・・・」
「感謝するわ。もし裏切ったら三人で殺してもらって構わない。あたしの名前は”レナ”」
レナは三人に覚悟を見せた。その時の表情は真剣そのものだった。敵として遭遇していた時の態度とは違う。
「俺は聖斗」
「俺はジン。いちようリーダーしている」
「私の名前はエリ。これからよろしく!レナ。さんって呼ぶ方がいいかな?」
「レナでいいわ。よろしくエリ!」
こうしてレナは仲間として向かい入れられた。レナの表情は穏やかになっていた。
「さて、こいつらは?俺はこのまま縛り付けたままで」
聖斗が次の問題に話を切り替えた。この捕まっている二人はエリとレナの闘いが始まる前にあらかじめ、樹木に縛り付けていた。
「それは甘い!。こいつらは回復したらまた襲ってくるわ。ひつこく。蛇のように」
レナが聖斗の意見に反対した。この二人を甘く見たらいけないと。さっきまで仲間としていたから。二人のことはよくわかっていた。
「なら、選択肢は一つ。どの道、食料もない」
ジンの言っている意味が聖斗とエリはわかっていた。レナは聖斗とエリの表情を見て・・・。
「あたしがけじめをつける。三人共、人やるなんて経験まだないでしょ?そういう目してないもの。それにあなた達を裏切らないって証明もしたいから」
「他に方法はないのか?俺は殺すのは・・・」
「ないわ!放置すればこの四人の誰かが殺される」
レナがこの二人の始末を買って出た。誰かがやらないといけない役割を経験のある自分がやると。するとジンが呟く。
「やんなきゃ、やられる。やられる前にやれか!」
「そういうことよ。ここは戦場なの!」
聖斗とエリはきびしい表情をしていた。レナとジンのいったことは正論なのだ。これが現実。聖斗は自分が余程平和な環境で生きてこれたのだと実感した。
(戦わずには平和は得られないってことか)
「三人は遠くにいってて。終わったら呼ぶわ」
「いや、俺は見届ける」
「俺も」
「私も」
三人は覚悟を決めた。ここで生き残る為には現実から目は背けられないと。
「そう。わかったわ。でも、辛いなら離れてもいいからね」
そして、サバイバルナイフを手に持ち、二人に近づく。
「助けてくれよ、レナ。仲間だろ!俺たちも仲間になるから」
「嘘。どうせ仲間になるなんてさらさらないでしょ!わかっているのよ」
聖斗、ジン、エリはレナと二人の様子を見つめていた。そして・・・。
「短い間だったけど。これで終わり。さよならね!」
レナの目が変わった。それを見た二人は恐怖に怯える。自分達は力が無くなり捕まり、縛り付けられ身動きが取れないからである。
「考え直せしてくれレナ!」
男が命乞いをする。だが、レナは聞き入れない。聖斗はその時つくづく仲間に向かい入れて良かったと思った。
「潔く散るのね。さよなら。あなた達は本当に不愉快だった!」
そして、レナは二人を始末した。ジンとエリは目を背けずに見ていたが、聖斗は目を逸らしてしまった。
「終わったわ!次は腹を開くわ。待ってて」
腹を開き、内臓を取り出す。手つきが慣れていた。
「随分と手際がいいな。抵抗はないのか?」
聖斗は聞いた。裁いている様子をまともに見れない。”よくやるな”という感想を持っていた。
「ここに連れて来られてから、やっていたから。もう平気になったわ」
「そうか」
レナは一通りの作業を終えた。辺りは普通の人がこの現場を見たのならば、無残である。だが、聖斗の置かれている状況は普通ではない異常である。しかし、ここでは当たり前だった。
「じゃあ、焼くわ!ライター貸してくれる?」
聖斗はライターをレナに貸した。そして、肉を焼き始めた。すると、焼いているにおいがしてきた。その前からもにおいはしていた。このにおいは美味しいと感じるにおいではない。
「焼けたわ!」
三人共、焼けた肉をもらった。すぐにはかじりつかず間が置かれた。それぞれ心の準備をしているのだろう。最初にかじりついたのはレナである。躊躇はない。それを見て次にかじりついたのはジンとエリだった。聖斗も意を決し、思いきってかじりついた。
「そんなに不味いってわけじゃないけど、いいもんじゃないな!」
食べ終わり、体にある変化が起こっていた。
「力が出てくるな!」
「そうでしょ。亜人を食べると力が湧いてくるの。それと運が良ければ、能力を引き継げるかもしれないわ。この四人の誰かが。でも、これ禁忌の行いなの」
「ふふ、そうよ!あなた達は合格。おめでとう」
突如として、声が聞こえてきた。後ろにいつの間にか女性が立っていたのだ。
「いつのまに」
「気づかなかった」
聖斗とジンが言った。
「あなた達の様子を見せてもらった。特にその子は優秀だわ」
この試験官はさきほどまで樹木の天辺に立ち、これまでの状況を傍観していた。この女性の試験官の印象はとにかく体の露出が激しい。甲冑のような鎧を着ていた。聖斗は露出狂かと思ってしまった。そして、レナを褒めている。
「それに比べて、あなた達は・・・しっかり調教しないとね!」
それを言った時、試験官を名乗る女の雰囲気、目が普通ではないし、三人は恐怖を感じた。
一瞬殺気を向けられたのである。
「あんた達は異常だ!」
「矯正所に来なさい。しっかり教育してあ・げ・る!来なかったら・・・ふふ」
そう言って、試験官の女は一瞬の内はにその場から消え去った。
「ちっ、理不尽が。あの露出狂のキチガイが!」
「あの試験官の言う通り矯正所を探していかないと、そうしないとみんな殺される」
「ええ、そうね」
ジンが次にやるべきことを示した。それにレナが最初に同意した。
「みんなで生き残らなきゃ!」
「ああ」
聖斗がエリに返事をした。二名の亡骸は埋葬できないのでそのままにして4人は歩を進め、矯正所に向かった。

「さよなら。あんた達。地獄にいきなさい」
レナは無言にしたかつての仲間の亡骸に怨みを吐いて、その場を立ち去った。
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